共通テスト講評 国語編

皆様こんにちは。
高校生コース講師の小谷野です。

先週に引き続き共通テストの講評を残しておきます。

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講評 ~国語~

全体として、昨年よりも少し難しくなったかなという印象です。
問題の問われ方が多様化したこと、複数テキストの問題が1⃣3⃣4⃣と三問あったこと、分量が多く80分で解き終わるのが困難であったこと、などがその根拠です。
センター試験時代からあったような解き方が通用するものもあれば、共通テスト特有の問われ方も増えたなと思います。
各大問を見ましょう。

1⃣評論

まず、二つのテキストを読ませる問題です。
「食べること」という主題は同じですが、書かれ方やテイストは異なる文章でした。
どちらも、典型的な評論文というよりは、随筆に近いような印象です。
【文章Ⅰ】ではさらに、小説が引用されるという構造です。

問1:漢字問題の問われ方が変わりましが、内容は平易だったと思います。
問2,3:【文章Ⅰ】に関する問題。センター試験形式の問題です。ただ、過去のセンター試験のような指示語で一発みたいなタイプではなく、ある程度深い内容理解が問われた印象です。「食べること」が主題の中で、小説が引用され、その主人公が、「何に対して」「どういう理由で」「どのような心情であるか」という筆者の分析を踏まえる必要がありました。心情に関して、「対象」「原因」「内容」という三点セットは小説でも重要な視点です。
問4、5:【文章Ⅱ】に関する問題。類比の関係を問う問題。センターは対比を問う問題が多かったですが、今後は共通点を問うような問題も増えると思われます。あとは、表現の効果を問う問題。センター時代から導入されていた問われ方ではあります。
問6:新傾向と言ってもいい問題です。昨年度の共通テストから導入されましたね。これが二つのテキストの関係を問う問題。複数テキスト問題ならではの問い方ですね。二つの文章の連関、類比を捉えることが要求される問題でした。

わざわざ二つの文章を読ませておきながら、二つのテキストの関連を問うのが最後問題のみでしたが、今後はこうした形式が増えると予想しています。

2⃣小説

場面設定が現代に近く、舞台設定はやや想像しやすかったと思います。
物語の中身は、通常の想像を超える展開ではありますが…。

先に述べますが、小説問題の解き方の基本は、
「心情の原因」→「心情の対象」→「心情の中身」
を正確に、文章の表現通りに、過不足なく把握することです。
これは、センター時代から変わらずの常套手段なので、身に着けたいです。

まずは、語句問題がなくなりました。ここが苦手だった生徒にとっては有利だったかな。
問1:「心情の原因」を答える問題。直前部分の事実の吟味が必要。あとは、私が「道の反対側に移って彼の前に立っていた」という行動の要因であることに注意する。
問2、3:これは、典型的な問題たち。傍線部の「心情の中身」を把握し、その原因と対象を正確に文章中から探し出せれば正答できたかなと思います。
問4:「表現」と絡めていますが、基本的には上記と同じ。あとは、時系列や事実を確認すること。
問5:新傾向の問題。文章中の「案山子」という表現から考察を広げる問題。登場人物の心情の変化を問う問題はセンター時代からありましたが、その応用編という感じ。問われていること自体は、それほど難しくないと思います。主人公の心情の変化を把握すれば、あとは【ノート】の説明を見れば解けると思います。問題の選択肢が長くなれば長くなるほど惑わされる生徒が多いですが、そんな時こそ傍線部に戻ってください。作問者はいい加減に傍線を引いたわけではないです。迷ったら傍線部。

今年の中では唯一の単独テキストの問題。決して平易ではなかったですが、センター時代の解き方が一番通用した大問だったかなという印象です。

3⃣古文

先におすすめ動画を紹介します。
共通テスト2022年分析&最速解説【古文読解・古典文法・勉強法】 楽しく学ぶ古文チャンネル
上記の動画は、古文の全体の講評+問1の解説です。
問2以降の動画も出してくださっていてめちゃ分かりやすいので、ぜひご覧ください。

上記を見てもらえれば、僕が述べることは何もないのですが、一応感想を記しておきます。
まずは、難易度としてはそこそこ難しかったと思います。
主語が取りにくい文章だったなと思います。
昨年度も古文は難しかったので、相対的には昨年並みですね。
古文が難しいという傾向は変わらないと思います。

同じ題材に関して、歴史物語と日記というジャンルの違う二つのテキストを読ませるという問題の出し方は面白いですね。

問1:ここは単語と文法の知識がほぼかなと思います。(ウ)のみ文脈に頼るかなという印象。
問2:傍線部の主語を把握しないといけない難問。リード文からの状況把握と、敬語や単語の意味から主語を把握する技術が求められた。
問3:引っかけの選択肢が巧妙。傍線部の心情の中身だけではなく、一つ前のセリフの内容を理解しないといけない問題。
問4:生徒の会話から【文章Ⅱ】の読解を要求する問題です。個人的には【文章Ⅱ】の方が難しかったです。主語を把握できません。日記文学であるという特徴、リード文からの状況の想像、などを駆使して発言者を特定しないと物語の全体像がつかめなかったと思います。ただ、文章の読解は難しいかったですが、問題の解答は生徒の会話を参考にすることで解くことができました。文章の中身がわからなくても、解答をあきらめないという姿勢が重要だと思います。

古文は難しかったです。主要な登場人物が3人以上の文章は読みにくいですね…。
古文常識や勘がないと読めない文章だったと思います。

4⃣漢文

3年連続漢詩!
そして漢詩の知識も問われました。
全体として、古文の反動かもしれないですが、知識問題の比重が大きかった印象

問1,3,4,5:これらは知識問題。「苟も」の意味、漢詩の知識、間に目的語が入ったときの「奈何」の読みなど知っていれば瞬殺、知らなければ解くのが困難な問題でした。
問2:返り点問題は基本的に、述語の漢字を特定すれば解けます。今回は、動詞となる漢字を推定し、その目的語となる漢字を考えることに加え、「有~者」の返り点のつけ方がわかれば解けたかなと思います。
問6:【序文】の方の時系列を正確に追えれば正解できます。止まった場所に丸印などをつけながら読解すれば大丈夫だったはず。
問7:【詩】の読解は困難。【序文】の後半をよく読めば解答可能。心情問う問題なので、まずは「心情の中身」。そのうえで、「心情の対象」、「心情の原因」を本文から探せればOK。

半分以上は知識問題でした。
漢詩の読解はさほど必要ではなく、序文の方の標準的な読解が求められたかなと思います。

勉強法

①複数の文章の共通点を探す練習

予想はされていましたが、複数テキストの問題が出ました。
その中でも、評論においては「二つのテキストを組み合わせて更なる結論を考察させる」能力、古文においては「ひとつの出来事を多角的に捉える」能力を問いたいのかなという印象でした。

評論文の読解に関して言えば、日ごろから読書(新書など)をすることはもちろん、複数の本の内容を組み合わせて物事を考察するクセをつけられればなおよいかと思います。
特に複数の文章の共通点を見つける姿勢が大事です。
漠然と読書するのではなく、今まで読んだ本の中で似た主題を論じていたものはないか、類似の主張を展開していたものはないか、などを考えながら読みましょう。
本で読んだ考えを現実の出来事や事象に当てはめて考える習慣も大切だと思います。

今回の評論文も、なんとなーく流行りのSDGsみたいな話を参考にしている気がします。
人間と自然の関係のような主題でしたね。
その中で人間がどのような思想を持って生きていけばいいのかを指南してくれているのだと思います。
至っている結論としては、両文章とも哲学的ですが…。

②古典の知識を身に着ける

古典に関しては、現代文とは対称的な傾向を予想しています。
現代文はどちらかというと、知識ではなく目の前の文章を読解する能力が求めらました。
対して古典では、「知識」が、得点のための重要な要素だったと感じます。

古文では、文法や単語を問われる問題は減りました。
しかし、読解という点では、目の前の文章の読解と言いうよりも、事前に古文常識を持ち合わせ、主語を把握する方法を体得しておくということが求められました。
院に仕える女性の存在。
気持ちを伝える手紙には和歌をつける。
その手紙は本人ではなく、仕える者が届ける。
とか
敬語の敬意の方向による主語の把握。
日記文学での主語の把握。
など
古文常識と読解力が求められました。

漢文は言わずもがな、知識を持ち合わせていれば終わる問題が多かったです。
知っていれば瞬殺、知らなければ何日考えても分かりません。

古典を学校で学ぶ意義があるのか、という議論が盛んではありますが、共通テストが求めるのは、読解のための知識です。
目の前の文章をなんとなく読んで解く能力ではないらしいです。
過去の文献を読むためにはある程度の知識が必要であり、それを持って読解に挑んでほしいというメッセージだと思います。
日本語の表現を学ぶ古文。
日本的な思想の根底を学ぶ漢文。
個人的にはどちらも学ぶ価値があるものだと思っています。
来年以降の受験生は、古典読解のための知識を習得する時間をしっかり確保しておく必要がありそうです。

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