続編 「大学入学金は返還不可」という問題

久しぶりのブログとなります。
高校生コース講師の小谷野です。

今回は、過去ブログの中でも閲覧回数が上位に来ている
『「大学入学金は返還不可」という問題』
の続編です。

前回の記事は以下からご覧ください。
「大学入学金は返還不可」という問題

再びこの話題を取り上げることになったのは、とある高校の取材を受けたからです。
それは、東京都にあります錦城高等学校‎です。
ある日突然、東京の高校生から取材依頼のメールが塾に入ってきました。
なんと、錦城高校映画研究部の高校生が、こんな片田舎の塾講師の稚拙なブログを発見してくださり、取材を申し込んできてくれたのです。
そのテーマがちょうど、行かない大学への入学金が返ってこない、というものでした。
ネットで調べたらたまたまここに行き着いたらしいです。

ということで、専門家でもないのに偉そうに取材に答えてしまいました。
本当の専門家の方々には申し訳ないです…。

そして、彼らが作ったドキュメンタリー『返金不可能、大学への切符』が第69回NHK杯全国高校放送コンテストの全国大会決勝でテレビドキュメント部門優良(トップ10入賞)に選ばれました。
素晴らしいですね!!!
全国405作品の中で10位入賞らしいです。すごいですね。
自分は何もしていないのに嬉しくなりました。
映画研究部の受賞に関する錦城高校の記事はこちらから見ることができます。
(NHK杯全国高校放送コンテストは、「放送部の甲子園」とも呼ばれる大会で、放送関係の大会としては最も規模の大きく、全国から1435校、11805名が参加していたそうです。)

そんないきさつもあり、改めてこのテーマのブログを執筆しました。

今回のブログのメインはもちろん、錦城高校映画研究部のドキュメンタリーの紹介です。
8分程度にまとめられていてそんなに長くはないので、ぜひ気軽にご視聴ください。

短い動画ですが非常によくできています。
視覚的に伝わるので動画という媒体は素晴らしいですね。
おそらく、現役の高校生たちの多くは、この問題を知らないのではないでしょうか?
もしかすると親御さんも詳しくない方が多いかもしれません。

前回のブログ執筆後(2021年5月以降)の動きとして、入学金納入時期延長を求める学生有志の会が2021年6月3日に文部科学省に要望書を提出したようです。
2021年6月11日には国会でも議論されたようです。
しかし、それ以降は目立った動向はありません。
おそらく国としては、現状でも学生の経済的負担軽減を目的とした対策は講じているし、大学へも補助金を出して対策を促しているので、これ以上何かをすぐに行う気はない、ということなのでしょう。

詳しくは以下でご覧ください。
入学金納入時期延長を求める学生有志の会HP
衆議院HP 令和三年六月十一日提出 質問第二二二号 大学入学金の納付等に関する質問主意書

前回も書きましたが、この問題は日本社会が抱えている構造上の問題の一つの表れだと思います。
 ・大学の数が増加し、大学進学率が上昇していること。
 ・企業が新卒一括採用、年功序列の制度を続けていること。
 ・日本の学歴社会が、大学での研究内容ではなく、大学名自体を重視していること。
 ・日本政府が高等教育にかけている予算が少ないこと
上記のような数十年来の傾向が重なり、何も考えずにとりあえず大学に行くこと、その費用は自己負担であることが当たり前になっています。
少し前に人気Youtuberのヒカルさんが大学受験に関して行った発言が反響を呼んでいますが、「大学受験が洗脳である」というのは半分本当だと思います。
いずれにせよ、大学が高校の延長としてみんなが行くものという風潮は年々高まっています。
それに反して日本が教育にかける予算は非常に少ないです。
(2020年のOECDの発表によると、日本の2017年における初等教育から高等教育の公的支出が国内総生産(GDP)に占める割合は2.9%で、比較可能な38か国中37位らしいです。38か国平均は4.1%で1位のノルウェイは6.4%です。詳しくは以下の文部科学省のページをご覧ください。図表でみる教育(Education at a Glance)OECDインディケータ

大学という分野にビジネスチャンスが広がっていると同時に、そもそも大学がビジネスをしなければならない現状に追い込まれていること。
大学の学費というものが一体いくらだと妥当なのかよくわからないということ。
それらが重なって、現状のシステムに多くの人が疑問を持ちにくいこと。
こうした原因によって、この問題が解決せずに残っているのだと思います。

もちろんすぐに解決できる問題でないでしょう。
しかし、高校生がドキュメンタリーを制作するというように、草の根から声を上げていく活動は非常に意義があると思います。

錦城高校映画研究部の動画を通して、少しでも多くの人にこの問題を知ってもらえればありがたいです。

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