皆さん、こんにちは。
高校生コース講師の小谷野です。
今回は、「国公立大学を安易に諦めないための受験戦略」について話していきます。
主には高校生、特に志望校に悩んでいる高1、2生に参考になればと思います。
中学生以下の方も、まだ遠くて実感はないかもしれないですが、参考にしてもらえれば嬉しいです。
初めに断っておきますが、私立大学がダメというつもりは決してないです。
もちろんいい私立大学もたくさんあります。
○○大学に行ってこの研究をしたい、といった明確な目標があるなら私立大学を目指すのはもちろん素晴らしいことだと思います。
それに、単純に遊びたいから大学に行くという思考も否定はしません。(僕なんかもそんな感じだったので)
なので、国公立大学至上主義のお話ではありません。
今回お話したいのは、
「なんとなく国公立大学に入るための勉強が大変そう……」
「なんとなく共テで6教科8科目を受けるのがめんどくさい……」
「なんとなく国公立大学より私立大学がオシャレそう……」
みたいな曖昧な理由で国公立を諦めて、私立でいいやって思ってるのであれば、
ちょっと待ってください!
ということです。
国公立大学の魅力2選
国公立大学にある魅力をまずは共有いたします。
学費が安い
現実的にこれが一番の魅力かと思います。
国公立大学と私立大学を比べると、国公立大学の学費は圧倒的に安いです。
半分以下と言っていいと思います。
国公立大学の標準の年間授業料は535,800円、標準の入学金は282,000円です。
基本的には文系も理系も変わりません。(一部大学はこれよりも高い場合があります。)
つまり4年間で大学に支払う金額は約250万円(6年で約350万円)です。
私立大学の場合はどうなのか。
今回は具体的に慶応大学の例を見ます。
(慶応は文系、理系、医学部までを備えているので、比較対象としました。
金額的にはやや高い方という感じですが、決して高すぎる方ではないです)
【文系学部の場合】;年間授業料—約120万円 入学金20万円
⇒ 4年間で約500万円
【理系学部の場合】:年間授業料—約170~230万円 入学金20万円
⇒ 4年間で約700~860万円、6年間(薬学部薬学科)で約1,440万円
(理工系学部が安い方で、薬学・看護学部系が高い方です)
【医学部の場合】:年間授業料—370万円 入学金20万円
⇒ 6年間で約2,240万円
(※4年間、6年間の合計金額には施設使用料などが合算されています。)
参考:慶応義塾大学の【学部】学費
国公立大学と私立大学を比べると、文系では2倍程度、理工系や医学部では3倍から6倍程度違います。
家計の負担を考えると国公立大学に行くメリットは大きいと思います。
現役で私立大学に行くよりも、浪人して国公立大学に行く方が結果的には安く済みます。
もちろん奨学金制度や特待生制度がありますので、私立大学に通ってもこれより安くなる場合はあります。貸与型の奨学金だと学生本人の借金のような形にはなってしまいますが…。今回はそこには深入りしません。
科研費が高い
こちらはもう少し学術的な魅力です。
皆さん、科研費と言われてピンと来るでしょうか?
ピンと来る人は相当大学について勉強しています。
科研費とは、「科学研究費助成事業」の略で、日本学術振興会という組織から大学や研究機関が研究費としてもらえる助成金です。
科学研究費助成事業は、人文学・社会科学から自然科学まで全ての分野にわたり、基礎から応用までのあらゆる独創的・先駆的な「学術研究(研究者の自由な発想に基づく研究)」を対象とする「競争的研究費」です。専門分野の近い複数の研究者による審査である「ピアレビュー」という方式によって、独立行政法人日本学術振興会を中心とした審査を経て、その配分が決定されています。
(文部科学省研究振興局学術研究推進課の資料より抜粋)
科研費の額が高いほど自由な研究、最先端の研究が可能ということです。
ただ実は、この科研費は学問分野ごと、研究内容ごとに分配されているので、大学がもらっている全体の金額だけが大事なわけではないです。今回はざっくりしたイメージを共有するために、大学全体の配分額を示します。分野ごとのランキングも公表されており、それも非常に参考になるので、ぜひ見てみてください。この大学はこの分野に強いんだな、ということを調べることができます。
以下に令和5年度の科研費の配分が10億円を超えている大学を配分金総額順に記しました。
配分金は1000万円以下を四捨五入しています。
実際のランキングには大学以外の研究機関も入りますが、下の表には入れていないです。
赤線が国公立大学、青線が私立大学です。
大学名 | 採択件数(件) | 配分金総額(円) | |
1 | 東京大学 | 3,948 | 209億 |
2 | 京都大学 | 2,933 | 137億 |
3 | 大阪大学 | 2,579 | 102億 |
4 | 東北大学 | 2,325 | 100億 |
5 | 名古屋大学 | 1,712 | 76億 |
6 | 九州大学 | 1,994 | 73億 |
7 | 北海道大学 | 1,687 | 61億 |
8 | 筑波大学 | 1,368 | 44億 |
9 | 東京工業大学 | 843 | 41億 |
10 | 慶応大学 | 1,027 | 35億 |
11 | 広島大学 | 1,193 | 29億 |
12 | 神戸大学 | 1,117 | 29億 |
13 | 岡山大学 | 1,064 | 28億 |
14 | 早稲田大学 | 1,022 | 26億 |
15 | 千葉大学 | 908 | 25億 |
16 | 金沢大学 | 950 | 24億 |
17 | 大阪公立大学 | 920 | 22億 |
18 | 東京医科歯科大学 | 218 | 19億 |
19 | 熊本大学 | 714 | 19億 |
20 | 新潟大学 | 755 | 17億 |
21 | 順天堂大学 | 770 | 17億 |
22 | 立命館大学 | 664 | 15億 |
23 | 長崎大学 | 681 | 14億 |
24 | 東京都立大学 | 423 | 12億 |
25 | 東京理科大学 | 418 | 12億 |
26 | 徳島大学 | 458 | 11億 |
27 | 横浜国立大学 | 327 | 11億 |
28 | 信州大学 | 590 | 11億 |
29 | 日本大学 | 678 | 11億 |
30 | 山口大学 | 484 | 11億 |
31 | 愛媛大学 | 448 | 11億 |
32 | 東京農工大学 | 285 | 10億 |
上記の通り、科研費10億円以上の大学は国公立大学が26校、私立大学が6校という結果です。
ちなみに全国の国公立大学は177校、私立大学は約600校です。
もちろん、科研費は大学ごとの規模や学部の種類にも依るので、これだけでは一概に判断はできないです。科研費以外の助成や収入でも研究費は賄われているので、科研費だけがその大学の研究レベルをきめるわけではありません。それに、研究するためだけに大学に行くわけではないという人には研究水準は関係ないかもしれません。
ただ、科研費をもらえるような高いレベルの研究をどれくらいしているのか、という指標は一つ大事な判断基準だと思います。
科研費を多くもらっている大学は、国公立大学に多いという結論だけは確実なことです。
国公立大学を目指すには
上記2点で国公立大学のメリットはおおよそ共有できたかと思います。
語弊を恐れずに言うと、国公立大学は学費が安くて研究レベルが高い傾向にある、ということです。
それはわかったとして、そもそもどのようにして国公立大学を目指せばよいのでしょうか?
国公立大学を一般選抜で受ける場合、共通テストで6教科8科目を受け、二次試験として大学の個別試験を受けるという形が一般的です。
この受験方法に関して、まずは厳しめなアドバイスをします。
共通テストで6教科8科目を受けることを諦めないでほしいです。これが大前提です。きついのは重々承知です。現代の高校生は、学ぶべき科目の内容も増え、探究の授業などの負担も増え、部活やSNSにかける時間も多くて大変だと思います。昭和や平成の高校生とは生きている環境が異なります。それは確かに、大人世代に対しては言い訳になります。しかし、同世代に対しては言い訳にはなりません。現代にも、しっかり6教科8科目を高い水準で勉強して、東大や京大に受かる高校生がいます。まずは、共通テストまでの机上の勉強も簡単には諦めないでほしいです。
首都圏や関西圏の中高一貫校の生徒には上のアドバイスで十分だと思います。
恵まれた環境にいるのだから、四の五の言わずにまずは勉強をしろと。
しかし、その他多くの高校生にとっては、これが現実的でないことは承知しております。
では、どのようにして国公立大学を目指すのか?
ズバリ、
①年内の推薦型入試
②地方の国公立、特に公立大学を視野に入れる
です。
国公立大学の推薦型入試のことももっと調べた方がいいです。
(ここでは、総合型選抜と学校推薦型選抜を総称して推薦型入試と表記します。)
推薦型入試での入学者は、私立大学で約6割、公立大学で約3割、国立大学で約2割となっております。
「どうせ私なんか、旧帝大は無理だよ」
「とりあえずMARCHでいいや、とりあえず日東駒専でいいや」
そんな風に思ってないですか?!
東北大や筑波大の推薦型入試を調べてみてください。
共テなしで受けられる形式が結構多くあります。
共テがないから簡単、という意味ではありません。
志望理由書や小論文といった、一般選抜とは異なる対策が必要です。
これに気づいてる人は、すでにそちらに向けた対策をしています。
一般選抜を受けるという選択肢を捨ててほしくはないのですが、推薦型入試もしっかり視野に入れてください。これは全高校生共通の思考です。
一般選抜と推薦型入試を両方対策する。
これが現代の大学受験におけるニューノーマルだと考えています。
この思考によって、受験できる大学の幅が広がります。
また、地方出身であれば、積極的に地方国公立も視野に入れるべきです。
自分が住んでいる場所だけではなく、違う地方の国公立大学です。
特に公立大学。
特徴的な研究をしている地方の大学も数多くあります。
(もちろん地方の私立大学もそうです。)
データサイエンスで有名な大学、地域医療で有名な大学、地域の農業の研究で有名な大学、などなど
知名度だけで都会の私立に流されずに、地方国公立にも目を向けるのは大事だと思います。
国公立大学も私立大学も同じくらいのテンションで検討してもらえらえればと思います。
詳しい受験対策等の話はまた次回以降にします。
また、当塾がどのような対策をサポートするのかは、高校生コースも参考に見てみてください。