2023年共通テスト講評 英語リスニング編

皆様こんにちは。
高校生コース講師の小谷野です。

今回も引き続き、2023年の共通テストを講評していこうと思います。

英語リスニング編です。

CONTENTS

全体講評

全体としては、やや易化したかと思います。

まずは基本情報。
平均点:63.04点(2023)※中間集計値 ← 59.45点(2022) ← 56.12点(2021)
マーク数:37(2023) ← 37(2022) ← 37(2021)
ページ数:27(2023) ← 27(2022) ← 27(2021)
問題量には変化なしです。

たしかに前半で紛らわしい問題もあったのですが、後半の第5問、第6問あたりは昨年度より解きやすかった印象です。
第1問~第3問までは、引っかける気まんまんの英文と選択肢たちでしたね。
注意して聞かないといけないのは、
・動作の主語と目的語
・時制
・否定文か肯定文か などです。
意地悪な問題の間に、驚くほど純粋な問題もほどよく混ざっているので、疑心暗鬼になった人もいるかもしれません。
第5問の講義メモやグラフ問題は、常識から考えても正答できてしまう問題だと思います。
第6問は昨年度よりも正答しやすい気がしています。

全体に関わる変化としては、話者の多様化ですね。
これは、令和5年度の問題作成方針でも示唆されていました。
普通のアメリカ英語はもちろん、少し訛りのある英語、日本人っぽい非ネイティブの英語などが織り交ぜられておりました。

設問別の所感

ここからは設問別に見ていきましょう。

第1問
まずは2回読みパート。
(A) 一人の発話で1文のみです。
動詞の言い換えで引っかけてくる問題が多かった気がします。選択肢の英単語を別の対象に使っていたりするので、そこを冷静に聞き分ける、もしくは同じ意味だと判断する必要がありました。問1は close と shutの言い換え。work がwalk に聞こえるのも紛らわしかったですね。 問2はclean と wash の言い換え。already や haven’t の聞き取りも重要です。今年はさほど多くないですが、肯定文か否定文かの引っかけも頻出事項です。問3は昨年度もブログで書いたよくある引っかけです。 recieve と send という単語の関係をきちんと把握すれば解けるかと思います。問4は数字の聞き取り。 There are 20 students で、「現在」20人だとという聞きとりが必要でした。
(B) 一人の発話で2文程度。
ここは重要なキーワードの聞き取りを要求しているんだと思います。問5は not much。問6は behind 。問7は black pants と holding 。ここら辺は比較的易しいと思います。

第2問
まだ2回読みパート。会話形式になります。
(A) ここもキーワードの聞き取りが重要ですね。問8は、glasses, drink, computer と順番に聞き取れればOK。問9は、ここに捨てていいかという問いに、No と応えているのが大事です。問10は tying を聞き取れるかがポイント。問11は二つの要素をちゃんと聞けば簡単だと思います。不要な文言も多いので、そこで惑わされないのも大事です。

第3問
ここから1回読みパート。会話形式です。引っかけも巧みになってきます。
初めの方で答えを言ってしまう問いと、最後の結論が答えになる問いが混在するので、そこを見極める必要があります。
問12はほぼ一言目で答えを言っています。 after を聞き逃さず、時系列を頭の中で判断するのが大事です。最後に覆されたかと思いきや、それはダミーの情報です。問13は最後まで焦れずに聞ければ答えは単純かな。 cook と prepare の言い換えは定番ですね。問14は途中で答えを発言されます。問いが、What did the boy と過去の行動を尋ねているのがポイントですね。問15も答え自体は途中で発言されます。London で生まれた、という箇所を聞き逃さないのがポイント。London が UK だという地理の知識も必要です。問16は単語の言い換えを見抜く必要がある問題。get が buy、 pill が medicine と言い換えられています。drop by (立ち寄る)なんかも知らないと戸惑ったかもしれません。問17は、adopt を知らなくてもきちんと聞けばわかると思います。

第4問
(A) 短い文書に対して、答えないといけない問が多い箇所ですね。サクサク情報を処理しないとスピードに置いていかれると思います。問18~21の方は、少し難しいかもしれないですね。まずは、年代の言い方。あとは、項目ごとに増えたのか減ったのかを正確に聞き取る必要がありました。increase や drop はもちろん、significantly や slightly なんかも覚えておくといいですね。問22~25の方も、順番に情報を聞き取る必要がありました。Stage A → Stage B → Final Rank → その他、の順に賞品が説明されるので、冷静に一つずつを聞き取りましょう。最後の not winning any ~ の部分が分かりにくかったかもですが、選択肢的に何も獲得しないチームはなさそうなので、最後に言っていたのがその他の賞品だと判断できれば十分だと思います。
(B) ここは一人ひとりの発言をきちんと吟味できれば正答できると思います。聞き取るべき条件に関して、各発言者は言及する順序が異なったり、言い換えられていたりはしますが、さほど難しくはないでしょう。日本人話者の英語が出題されたのが面白かったですね。

第5問
講義を聞く問題。
ワークシートに穴埋めする問題は、先にあてをつけておいた方がよいかなと思います。そのうえで聞いて、正誤を判断した方がスムーズにいきます。答えを言いそうになったら身構える、という聞き方が大事になります。ここは発話される一連の文章が長いので、集中力を保つという戦いも必要です。問33のグラフ問題は、リスニングしなくてもグラフを見れば解けてしまう気がします。

第6問
ようやく最後ですね。
(A) ここも発話文が長いですね。長い割には設問が二つしかありません。焦れずに答えが話されそうな箇所を待ちましょう。前半は話のテーマを掴めてさえいればOK。息子とお母さんの hiking に対する基本的な姿勢を把握しましょう。そのうえで、会話をきちんと最後まで聞くことが重要です。問35は安易に④に飛びつかず、お母さんの最後の発言まで注意深く聞く必要がありましたね。
(B) 複数話者の意見を聞き分けないといけない問題。テーマ自体は、昨年度よりも高校生にとって取っつきやすいものだったと思います。話者の意見の違いもそんなにわかりづらくはないかな。問36に関しては、街の中心部に住むと「決めた」人、だったのが少し引っかけだったかなと思います。 Mary は、 think again と言ってました。問37の方は解きやすいかなと思います。答えの根拠自体は比較的序盤で話されてしまいますので、そこを聞き逃さないのが大事ですね。

問われている能力

大学入試共通テストで問われている能力は何なのでしょうか?
英語リーディングと被る点もありますが、大学入試センターが公表している資料から抜粋します。
 ●全科目共通の事項
①知識の理解の質を問う問題や,思考力,判断力,表現力等を発揮して解くことが求められる問題を重視する
 ●英語リスニング特有の事項
②生徒の身近な暮らしや社会での暮らしに関わる内容について,概要や要点を把握する力や必要とする情報を聞き取る力等を問う

英語リーディングでも同様でしたが、英語リスニングでは特に具体的な場面設定が多いですね。
抽象的な情報を聞き取らせるのは、第4問(A)と第5問くらい。
大学の講義のような難しい英語の聞き取りではなく、日常会話での聞き取りを重視していることがわかります。
そんな具体的な場面での正確な情報把握が求められます。
リーディングでもそうですが、主語と目的語の関係、時制、否定文か肯定文か、物事の分類、話者の意見など、漠然とではなく正確に聞き取る必要があります。

今後の対策

リスニングに関しては、今年の問題を受けて、特段変えるべき対策はないと思います。
基本的な対策は以下の通りです。

①英語を左から右に読むことに慣れる

これは、リーディングでも同じです。
特にリスニングでは、返り読みができません。
関係代名詞があったから、前に戻って、なんてできません。
音がどんどん流れていきます。

なので、普段英語を「読む」際から、左から右に戻らずに読むという練習は重要です。
無理に速く読む必要はありません。
リスニングで話されるくらいのスピードで十分です。
今回の共通テストの問題でいいので、音声と同じ速度でスクリプトを読んでみてください。
それで設問に100%答えられるようにするというのが第一歩です。
そのくらいのリーディング力をつけてから、音声を聞くという段階に移りましょう。

②英語の音に慣れる

ある程度のリーディング力が付いたら、英語の音声を聞き取る練習が必要です。
読めても聞けないのは、聞いた英語の音声を頭の中で再現できていないからだと思います。
英語を聞いたときに、文字として英語を再現できているかどうかが重要です。

英単語の発音をきちんと聞いていますか?
電子辞書という文明の利器をきちんと使った方が良いです。
音で聞いてみると、自分が想定していたものと違ったという単語は意外と多いことでしょう。
スペルはもちろん、音で単語を覚えておく必要があります。
そして、音で聞いたときにスペルに変換できるようにしましょう。
この練習の際にはフォニックスという概念も助けになります。(自分は大人になってから知りました…)
英語の発音のルールのようなものです。
YouTubeで調べれば気軽に学習できるので、フォニックスも知っておくとなおよいでしょう。

あと、ここからは持論ですが、日本人はどうしても言語の理解の際に文字に頼ってしまう習慣があると思います。
日本語には同音異義語が多いので。
熟語を聞いたときに、漢字を想像できていないと意味が取れないときがあると思います。
「そういえば田中さんって山田先生にシジしてたんだよね。あ、教えを受ける方のシジね。」
みたいな会話すると思います。(例がわかりにくくてすいません…)
逆に言えば、初見の熟語も漢字を想像できれば、意味も想像できるという利点があります。
なので英語を聞くときも、文字に変換しがちだと思います。(自分がそうなだけかもですが)
音で理解しようとしてももちろん良いのですが、文字に変換して理解するという手順の方がより多くの人に適している気がします。
ただ、これは絶対ではないと思います。
文字(スペル)を思い浮かべずに、意味に繋げられる人はそれでもいいですが、あまり多くはないかなと思っています。
なので、ただ愚直に、聞いた音を文字にする訓練が必要だと思います。

その訓練方法の一つがディクテーションです。
耳で聞いた単語を一語一句正確に書き取れるかどうか。
この練習が大事です。

③長い英語を聞くことに慣れる

共通テストのリスニングは長いです。
しかも本番は、社会受けて、国語受けて、リーディングを受けた1日目の最後に待ち受けています。
体力的にはなかなかきついです。
そんな状況で英語を聞き取るのは至難の業です。

なので、普段から英語を聞き慣れましょう。
それしかないです。
英語を聞いても苦にならない、という精神状態で試験に臨むのは意外と重要です。
早めにリスニングの対策を初め、長い英文のリスニングにも慣れておくとよいでしょう。

まとめ

リスニングに関しては、共通テスト特有の対策というよりも、一般的なリスニング対策で十分かなと思います。
どんな参考書でもよいので、リスニングをきちんと学習しましょう。

次回からは国語を講評していきます。

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