2024年度大学入学共通テスト 講評

皆さん、こんにちは。
高校生コース講師の小谷野です。

今年は、あけましておめでとうございます、ということも少し憚られる様な出来事が続いてしまいました。
受験生の皆さんも、気持ちが落ち込んでしまっていたかもしれません。
また、実際に影響を受けた方もいたかもしれません。
謹んでお見舞いを申し上げます。

大学入学共通テストを無事に受験された皆様は本当にお疲れ様でした。
まずは、ここまで努力して本番を迎え、勇敢にテストに立ち向かった自分を褒めてください。
そして、共通テストの復習はせずに、次に進んでください。
私立や国公立の試験を控える皆さんは、ここからが本番です。気を抜かずに今まで通り頑張ってください。
共テの点数が良くて油断してしまったり、逆に悪くて絶望から立ち直れなかったり、そんなことはすべて忘れ未来を向いてください。
受験はまだ終わってません。

では、今年の共テに関して所感を残しておこうと思います。
英語・国語・数学を振り返ります。
自分用のメモのような文章となりますが、来年以降に受ける高1、高2生は参考にしてもらえれば。

CONTENTS

英語

リーディング

●昨年よりも文章量が増加 しかし 語彙は普通レベルかな
●推測問題が増加 & 小賢しい計算問題が減少
●例年通りの問い方は健在 - 言い換え、opinion fact問題
●第5問に物語系の文章が復活

文章量は昨年よりも少し増えたようですね。(東進さんがそう書いておりました)
自分で解いた感じは同じくらいかなと感じてましたが。
第5問に3ページ目があって絶望した受験生は多かったかもしれないですね。
語彙は普通レベルかなーという印象です。昨年通りの語彙レベルですかね。
もちろん簡単ではないですけど、大学受験レベルとしてはちょうどいいと思います。
第6問Aのretrospective, prospective なんかは少し難しいですね。二項対立をしっかり把握できれば意味を掴めたかな。
第6問Bのvaporize, metabolism, diarrhea あたりの理系単語は文系にはイメージしにくいかなとは思いました。

昨年まで第4問にあった小賢しい計算問題がなくなったのはありがたいです。
その代わり推測問題が増えましたね。本文に直接的には書いてないけど、文章内容を把握することで解答を推測できたり、または選択肢を消去法で解いたりするような問題です。
今後難易度を保つためにこうした問題が増えるのでしょう。
第3問Aの問1は、写真の背景の説明はないけど、サルを連れた男の人がいて、かつSakura City Hallではない写真ですね。その問2も、状況の把握が必要です。このイベントは日本で行われ、Susanはもうイギリスに帰ってます。
第3問Bの問1の並び替えや問3のYuzuが見たであろう景色なども面白い問題でした。
第6問Aの問3、問4の具体例を答える問題も目新しいですかね。現代文なんかでは、3年前にあった気がします。
第6問Bの問4、問5なんかも本文には直接書いてはないけど、一致する内容として敷衍できる選択肢を選ぶ問題でした。ここの難易度は相当高かったかなと思います。

言い換えの複雑さは例年通りですね。
第1問Aの問1はpresent your student ID をshow proof that you are a TELS student 。問2はuse facial expressions and their hands to communicate を gestures 。
こんな感じで言い換えで引っかけてくる手法は無数に使われているので、正解の選択肢がどこから引っ張ってこられてるのか、どの表現をどう言い換えているのかをきちんと把握するのが大事です。
opinion fact問題も例年通りですね。
第2問の問3はopinion問題です。なので、良し悪しを表現する形容詞や、意見を表す助動詞(shouldなど)などに注目して選択肢を吟味してください。fact的に書かれた選択肢は答えになりません。

第5問が物語系の文章だったのが読みづらかったかもしれません。登場人物をきちんと把握して(古文のように人物を〇で囲むとか)、時系列をとらえることが求められました。
センター時代の第5問を練習してた人は解きやすかったかも。
良くある話かもしれないですが、登場人物たちの繋がりに心が温かくなりました。

家電の割引を計算させる小賢しい問題、クマムシ問題のように少し無理がある推測問題、なんかは今年はなかったですね。前提となる英語力はもちろんですが、論理力や想像力を問う問題が並んだという印象でした。

リスニング

形式は昨年とほぼ一緒。
●2回聞きの問題はシンプルなものが並んだ
●答えを発話する箇所の引っかけは昨年より減少したかな
●第5問がやや難しい その代わり第6問Bがやや易しい

第1問、第2問は標準の難易度かなと思います。
I’ve I’ll のような表現を聞き逃さずに時制を把握するのは大事です。
slimmest, stripes, our とか耳で聞いたときにきちんとスペルを理解できる力が必要かと思います。

第3問に引っかけが少ない気がしました。
昨年は、最初の方に言った話が答えかと思ったら後半で覆す、みたいな問もあったんですが、今年は比較的ストレートに答えの箇所はわかったかなと思います。
そこをきちんと聞き取れたかどうかは別問題ですが。
第4問の初めの問18~21は少し引っかけてきます。問22~25は流れに置いていかれなければ、1個ずつ埋められると思います。
ただ、1回聞きなので、もちろん慣れていないと難しいとは思います。
英語の字面をただ追うだけではなく、会話の場面をきちんと想像して話の内容を記憶に留める、という聞き方が必要だと思います。

第5問のワークシートへの穴埋めはやや難かと思います。
問27は「not」を見落とさないように。問28~31は言い換えが巧妙ですね。
会話で発話された単語にただ飛びついた人は誤答に吸い込まれたと思います。
第6問Aの問34も言い換えが巧妙だと思います。Michelleの主要な意見ではない箇所が答えなのは少しいやらしいです。
第6問Bは昨年よりはやや易しいかなと思います。意見の変化が聞き取りやすかったかなと。
ここらへんは英文が少し長いですが、これくらいの長さは集中して聞ける体力が必要です。

昨年までのリスニングを想定して勉強していれば今年は取りやすかったかなと感じました。
会話表現などはあまり問われません。単純に、音を聞いて英語を理解できる勉強が大切です。

国語

現代文

●評論:文章内容は少し難解 問1~5までセンター回帰 文章は1つのみ 問6は本文に戻らなくとも解ける
●小説:場面が現代 語彙問題が復活 問いの質は例年通り

評論は昨年に続き芸術論的な内容でした。
正直内容は少し難しいかなと感じます。
ただ、問いを解くだけなら立ち向かえるかなと思います。
問1はセンター時代の漢字問題が完全復活。
問2~4は、傍線部近辺の論理展開を掴めれば、選択肢を絞れるかなと思います。
このブログで何度も書いているかもですが、大事なのは選択肢の「述部」です。
長い前半部分に惑わされずに、最も大事な述部を吟味して選択してください。
問5は論理展開を問う問題。これもセンターっぽいし、引っかけの選択肢の誤った記述もセンター時代から多用されてた手法です。
問6が新傾向ではありますが、もう4年目なので驚きは少ないでしょう。脱文挿入などは私大っぽさを感じました。

昨年は同一主題に対する、2つの文章の読み比べで、問いももう少し全体的な理解を問うものを含んでいました。
それに対し今年は、本文は1つで、問いも狭い範囲の把握が主だったなという印象です。
センター時代の過去問はまだ有効なのかもしれません。

小説はやや易しいかなという印象です。
まず、場面が現代なので設定を把握しやすいです。
問1に語彙問題が復活。そして、そこそこ難しい語彙が並びましたね。(私は「やにわに」を知らなかったです…)
問2~5はシンプルに例年通りの問いかなと思います。
心情の「中身」と「対象」をきちんと把握すれば解けるかと思います。
問6は表現に関する問い。表現⇒効果、の論理的な整合性を確認してください。
問7も比較的シンプルかなと思います。問5までの解答を補助線にすると、最後の評論文を読み解きやすくなります。
国語も数学同様に誘導に上手に乗りましょう。

今年の国語のセットリストの中では、小説が取りどころかなと感じました。
来年以降に本気を出すための布石でしょうか。
張り切って詩とかを出してきたりして?!

古典

古文:和歌は毎回出る メインの主人公が一人なのは珍しい 「光る君へ」を意識?
漢文:再びの漢詩 世界史選択が有利 複数テキストから歴史を読み解くという誘導は面白い

古文は、昨年までと比べると読みやすいかなと感じました。
主語の把握が少し楽かなと。
主人公が一人で、敬語も明確。従者が付き添っているという古文常識やリード文に説明される場面設定を想像できれば物語の展開に置いていかれずに済むと思います。
問1の語彙はすべて入試頻出です。
和歌が出るのはもう覚悟済みだと思うので、掛詞くらいは大丈夫だったのではないでしょうか。
掛詞が分かったうえで、その意図まで掴めないと問3は解けなかったですね。
問4で、本文が「源氏物語」を踏まえているという考察を与えるのは、解いてて面白いなと思いました。
大河ドラマを意識したでしょうか。でも実際の「源氏物語」は出さなかったですね。2014年の一件がありますからね。

程よい難易度で、シンプルに内容把握を問う問題だったかなと感じました。
後半は源氏物語や中国故事の知識があると解きやすいですね。

漢文は漢詩が返り咲きました。
楊貴妃と玄宗の話は有名なので、世界史選択者にとって有利だったと思います。
問1は漢詩の形式を問うというちょっと高校入試のような問題です。
問3の書き下し文はシンプルかな。動詞である漢字を把握できれば速答だと思います。
これと言った句法が含まれない文の書き下しを問うことが多いですね。
資料を比較させて考察を深めていくという誘導は興味深いと思いました。
昨年までと比べて知識問題が減ったかなという印象です。
その場での読解力が必要でした。

国語全体のバランスを見ると、古典を早めに解いて、現代文になるべく時間を残したかったですかね。
まあこれは結果論ではあります。
語彙問題は知らないと解けないので、あまり時間をかけすぎないようにしましょう。

数学

数学ⅠA

●小賢しい問題設定が減り、シンプルに数学をやらせてきた
●三角比と二次関数の誘導が皆無
●確率、整数、図形は誘導が丁寧

今年はバスケットボールを投げなかったですね。
問題設定がシンプルなもの、抽象的なものが多かったと思います。
まず数と式はうまく誘導に乗るのが大切です。
これは毎年そうだと思います。
数学的にどんな意味があるのかなどを探らず、問題が指示する通りに、解答をひたすらに進めるという意識でいいと思います。
迷ったら、きちんと前の解答に戻りましょう。
前のどの番号を根拠に次の式を導いているのか書いてくれてるので、これは大きなヒントとなります。

三角比は少し難しかったかなと思います。
序盤の三角比の表は攻略してほしいです。
正弦余弦定理等の計算は一切なく、三角比で辺を表現できる方法を理解してるか問う問題でした。
最後のCDの表現は誘導がないので、一から自分で立式する必要がありましたね。
二次関数の驚きは、何と言ってもぺージ数の少なさ!
まだあるかなと思って次をめくるとそこはもうデータ分析の問題でした。
昨年はバスケットボールを投げるのに2ページ使ったのに、今年は問題が2ページで終了。
ただ、誘導が少なく難しかったかなと思います。
立式を全く誘導せず、最大最小を問うのはなかなか意地悪ですね。
以前のブログでも紹介しましたが、昔のセンターの問題を誘導なしで解いてみるのも有効かなと思います。

データ分析はシンプルです。
標準偏差や相関係数の計算問題が消えてしまいましたね。
2年ほど前は、小数第2位まで計算させれられましたが。
後半のデータの変換問題はきちんと慣れていないと何をしてるかついていけなかったかもしれません。
数Bの統計を少し知ってるとイメージしやすい変換だったかと思います。

数A分野のページ数が多いですね。これは昨年もですが。
確率は、問題設定が少しわかりづらいですが、これくらいの文章読解は我慢しましょう。
誘導がしっかりついているので、波に乗れれば解ききれるタイプの問題です。
逆に言うと、誘導を読み飛ばして自力で解こうと焦った人はドツボにハマったかと思います。
数学もしっかり文章を読解するのが大事です。
2年前の完全順列のように、1つ少ない条件で出した解答を次に活用するという流れが漸化式のようで面白いですね。
そして、無限に時間がループするという恐怖のタイマー問題です。
今年で一旦最後になる整数問題は、シンプルなn進法の問題と不定方程式の問題の組み合わせでした。
情報でもn進法は大事なので、その布石でしょうか。
桁が大きくなってしまい計算ミスをする人もいたのではないでしょうか。(ちなみに私はミスりました)
まだ4桁なので良心的だとは思います。
図形は☆問題。
メネラウスの定理と方べき定理、図形の2大巨頭揃い踏みの大問です。
図形問題は、使える定理を手札として把握しましょう。主なものは10個もないので。
その中からどれが使えるかなと思考するのが得策だと思います。
最後は計算問題に加え、図形の概念的理解が要求されました。

全体として、数学的問題、概念的に考察させる問題が増えた印象です。
昨年よりやや難しいですが、このくらいのレベルが続くのだと思います。

数学ⅡB

●グラフ描画問題
●概念的理解を問う問題
●論理的思考力を問う問題

三角関数アウトで整式の除法インという驚きのセットリストでした。
整式の除法が本試ⅡBに名を連ねたのは、共テではもちろん初ですね。
センター時代もほぼなかったのではないでしょうか。
数Ⅱの単独問題としてはあるのですが。
私は図形と方程式が出ると思っていたのでハズレました。
まず、logのグラフと領域図示が目を引きます。ここはきちんと理解していなかった人が多かったのではないかと思います。
グラフを書く問題は敬遠する人が多いですが、きちんと理解しておきたいところです。
整式の除法問題は内容はシンプルで、誘導もあるので、ここは取りたい。
ただ、数学的な論理の理解が必要なので、人によって感じ方が異なる問かなとも思います。
後半部分は、「前半の誘導を使ってね」というメッセージがにじみ出てましたね。

今年の微積は、桜の開花を予想しなかったですね。
個人的には昨年の問題も好きでしたよ。
今回のものは、すごく抽象的で、概念的な理解が求められる、まさに文系殺しの問題だと思います。
文系にとっての微積なんて、原理は不明だけど計算ルールは単純だよねというイメージの計算問題です。
なので、こんなに概念的理解を問われるのはきつかったと思います。
複雑な計算ではなく、微分と積分の関係性、また積分とは何をしているのかの理解が必要でした。

確率統計は天気予報させてきましたね。
気象予報士試験を勉強中の私としては少し興味を惹かれました。
個人的には、気象予報士試験で勉強するブライアスコアという計算を思い出します。
この計算方法は、晴れではなく主に雨予報の精度評価に使われます。
現象の有無を1と0で表現して、予報した降水確率との差の二乗の平均をとるというものです。
この問題とは何の関係もありません。すいませんでした。
やらせたい計算はシンプルですね。正規分布、信頼区間の計算。
そして数Bで出会う期待値の計算も見納めでした。来年からは数Aの範囲です。
回数と期待値を座標にプロットすると直線上に並ぶという気付きを与える誘導も興味深いですね。
来年以降は統計を選択する人も増えると思いますが、今年くらいの難易度のものは解けるようにするとよいと思います。

漸化式の初手はボーナス問題です。どんなにわからんくてもここの4点は確実に取ってほしいです。
全体としては、面白いタイプの漸化式に、数学的帰納法を盛り込んできてからの、最後は論理的な思考力を問う問題ですね。
具体的にどんな数列があり得るのかを想像する力が試されました。
ベクトルも非常に抽象的な問題設定。昨年に引き続きですね。
共テになってからは空間ベクトルが多いような気がします。
初めは方法を丁寧に誘導し、その後は自分で一から解きなさい、と突き放されるツンデレタイプの問題でした。
前半の誘導をしっかり把握し、計算は少々煩雑ですが後半も得点したい問題かなと思います。

抽象度が高い問題設定が多く、こちらも数学みが高いラインナップでしたね。
来年度からⅡBCに改編されるので、どうなるか読みにくいですが、数Ⅱ範囲に関しては、手薄になりがちな序盤の単元の勉強も大事ということですかね。

数学全体に言えることですが、きちんと基礎的な問題演習を積んだ人が正当に得点できるセットリストだった気がします。
昨年までと比べると、数学的な努力がきちんと得点に結びつきやすい試験内容だったと思います。

総評

今年は安定した難易度の問題が並んだなと思います。
無理がある問題や批判の的になるような問題はほとんどなかったと思います。
適度な難易度で、うまく差がつく問題だったのではないでしょうか。
共通テストの新傾向に加え、センター時代にうまくいっていた形式を継承したという印象です。
来年以降、たしかに形式等は一部変わりますが、問題の質も一気に変えてくることは想像しにくいです。
センター時代から問われていた基礎的な学力が継続して要求されるということでしょう。
来年以降の受験生の皆さんも、ぜひ早いうちに共テの問題を経験して、大学受験を肌で感じてもらえればと思います。

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