現代文頻出トピック講座①~デカルト二元論

こんにちは。
高校生コース講師の小谷野です。
今回は現代文講座の続編です。
前回を読んでいない方は、
「現代文って何を勉強すればいいの?」
をお読みください。

そこで予告した通り、現代文頻出のトピックをいくつか紹介します。
こうした定番トピックを知っていることで、難解な文章も少し読みやすくなります。
ただ注意点は、先入観を持ちすぎないことです。
事前の知識も重要ですが、一番重要なのは目の前の文章です。
それを無視して自分勝手な解釈の枠に押し込んでしまうのは危険です。
なので、前提知識は補助線として利用するイメージで参考にしてください。

本文最後に参考文献等あげますので、そちらもぜひ参考に。

まず第1回目は「デカルト二元論」です。
聞いたことありますかね?
近代ヨーロッパを物語る世界観の象徴のようなものです。
一言で言うと、「世界は精神と物質という二つの実体から成り立ってる」という考え方です。(※参考文献の76ページ)
デカルトさんはフランスの哲学者であり数学者です。
上の写真の方です(デカルトの英語の名言(英文と和訳) | 癒しツアー (iyashitour.com)から借用)
だいたい17世紀前半(江戸時代初期)を生きた方です。
「われ思うゆえにわれあり」
「困難は分割せよ」
などの名言が有名ですね。
ここでは、デカルトさんの詳しい説明は省き、その考え方の中身を見ていきます。

その前に、一番大事なことを言っておきます。
現代文読解で一番大事なキーワードは、「切り離し」を否定して「つながり」を肯定する
これに尽きます。
これは自分の予備校時代の恩師が口酸っぱく言っていたフレーズです。

さっそく、デカルト二元論の簡略図がこちらです。

中世までは、神が世界を作ったと考えられていました。
上図右側のイメージです。
中世のヨーロッパでは、キリスト教(教会)がめちゃめちゃ強かったのです。みんなが神に祈りを捧げ、神が絶対的な存在でした。神の造った世界に人間が手を加えるなんてもってのほか。人間は自然の一部でしかなかったのです。
人間と自然は「つながって」いたのです。

しかし、14~16世紀ころ、教会の力が弱まり、ルネサンスが興隆し、宗教改革が起こり、大航海時代を迎えると、人々の考え方は大きく変わります。
「ペストが流行っても教会は何もしてくれない!」
「地球は本当に宇宙の中心なのか?」
「海の向こうにまだ見ぬ世界が広がっている!」
「理性の力で世界を見よう!」それまでの当たり前だった世界観が変わっていったのです。
例えば、天動説→地動説。地球が宇宙の中心であるという考えから、地球は太陽の周りをまわっているという考えに変わりました。今ではこれが常識ですね。
日本で言えば、室町時代から戦国時代くらいでしょうか。
その時代に、ヨーロッパでは世界観が大きく変わったのです。

それで何が起きたか?

人間が世界の中心にいるという世界観が広まるのです。
人間は理性をもち、世界を観察する技術を持っている。
神は何もしてくれないが、人間は医療を生み出し病気を治せる。
人間こそが世界を支配し、自然を支配する覇者である。
少し誇張しておりますが、そんな観念が社会に共有されていくのです。
そこで、上図の左側のように、人間は自然から「切り離され」、上位に立つものになりました。
世界を人間/自然の二つに分けるということです。
それを二元論と言います。
その後の西欧社会の発展はみなさんご存じの通り。
産業革命、資本主義、国民国家など現代に繋がる社会の仕組みを構築していきました。


デカルト二元論の拡張版が下の図です。
人間/自然という二元論から、精神/身体、理性/感情という二元論に拡張されていきます。

ただ、いい面ばかりではありません。
感情より理性が優れている。身体は精神で操る。人間は自然の中でも特別な地位にある。
「世界の中心には人間がいる。」「人間が過ごしやすいように世界を変えていこう。」「理性を備えた人間は、本能のみで動く動物よりも優れている。」「この世界は理性で割り切れる。」という考え方に発展していったのです。
人間/自然、精神/身体、理性/感情という切り離しの思想がはびこるようになった結果、合理的であることが何よりも美徳になりました。それがヨーロッパ近代の合理主義です。
そこに、優れた西欧vs野蛮なその他民族、という図式が生まれます。
また、自然を人間の自由にどこまでも搾取するという産業の形も発達していきます。
世界の格差、環境破壊などの問題を生み出していきます。
これがデカルト二元論が生み出した「切り離し」の結果です。
※デカルトさんが悪いわけではありません。そんな社会の思想をデカルトさんが体系化したので彼の名前がついているのです。

そして現代になって、そんな「切り離し」が反省され、否定されます。
だから「つながり」を取り戻そう!
人間の思い上がりを正そう!
近代の二元論を改善しよう!
これが現代文定番の文章の流れ。
「つながり」を取り戻そうの議論がフィーチャーされやすいので、そもそも「切り離し」がどのように起こったのかを前提知識として知っておくのは大事です。

ちなみに、今年の共通テストの問題も、デカルト二元論を知ってると読みやすくなるものでした。
妖怪の捉え方の変遷に関して、中世と近世の対比の部分はまさにデカルト二元論の話でした。
上記の話を前提にもう一度読んでみてください。

次回以降、「切り離し」が起こる別の論点も紹介していきます。
「豊かさ」が「個人化」という切り離しを生むという話ができればと思います。

★参考文献
『新入試評論文読解のキーワード300』,大前誠司,明治書院

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