2023年共通テスト講評 英語リーディング編

皆さんこんにちは。
高校生コース講師の小谷野です。

今回から、2023年共通テストの講評を記していきます。
まずは、受験された皆様、本当にお疲れ様でした。
上手くいった人も、そうでない人も、終わったことは気にせず、切り替えていきましょう!
本当の勝負はこれからですので。

英語・国語・数学それぞれの科目について、
問題の講評、問われている能力や次年度以降に向けての勉強法に関して、
私見を述べて参ります。
参考程度にご覧ください。

まずは英語リーディングです

CONTENTS

全体講評

全体としては、やや難化という印象です。

問題を難しくしている要因としては、
・分量の増加
・設問の問われ方の変化
が挙げられるかと思います。

まずは基本情報。
平均点:55.07点(2023)※中間集計値 ← 61.80点(2022) ← 56.68点(2021)
マーク数:49(2023) ← 48(2022) ← 47(2021)
ページ数:39(2023) ← 36(2022) ← 37(2021)
昨年から比べると分量は増加したと思います。
4⃣の本文の文字がすごく詰まっていたし、6⃣Aは3ページ目まで本文があるし、6⃣Bでは選択肢の英語が3行あるものもありました。
英語を読む絶対量が増えたので、英語を読む体力が求められたのかなと思います。

設問の問われ方の変化も変化したと思います。
●減少した問題の種類↓
・複雑な算数をさせる問題(2022の4⃣)
・学術的な言葉の意味を理解させる問題(2022の2⃣B、6⃣AB)
●増加した問題の種類↓
・情報を照らし合わせる場所と設問の順序が違う、または探しづらい問題(20231⃣A、5⃣、6⃣B)
 ※文章を最後まで読まないと問1が解けないという類の問題は20225⃣や20214⃣などでも出ではいます。
・複数のコメントから情報を照らし合わせる問題(20232⃣AB、4⃣)
 ※複数コメントは昨年度の2⃣ABでも出てはいましたが、今回の方が複雑でした。
・直接は書いていないけど推測させる問題(20234⃣、5⃣、6⃣AB)
 ※消去法の際に、本文に明確に書かれていないから間違い、という選択肢は2022の5⃣などにもありました。

情報の照らし合わせの質に関しても、
昨年度は、フルーツの特性、猫に関する統計、朝型夜型の性格、リサイクルマークの説明など、学術的で短い情報処理が多かった気がします。
学術的な情報処理というのは、言葉の定義の理解、分類の理解、抽象的な説明などを処理するというニュアンスです。
短いというのは、該当箇所の情報自体は短かったという意味です。
それに対して今年は、叙述的で長い情報処理が多かった印象です。
内容が難しいわけではないのですが、具体的なストーリーの分量が多かったかなと。
端的な情報を探すというよりも、全体的な理解が求められていた気がします。
そして具体的な情報の抽象化が必要でしたね。

概観はここら辺にして、具体的に見ていきましょう

設問別の所感

設問別に見ましょう。

第1問
テキストメッセージではなく、広告からの情報抜粋でした。
第1問から情報の探索と照らし合わせをがっつり要求する問題だったので、少し戸惑った人も多いかと思います。
(A) 問1と問2の該当箇所の順序が逆ですね。問1は設問にある after reading the handout を先に読んで、広告の下部にすぐ目を移すという解き方が必要だったかなと思います。問2は talk とgreet と meet の言い換えに気づけるがポイント。
(B) 共通点を答えさせる問題が2問。複数の共通点を読み取らせるという設問は現代文にも通じる問い方なので、今後も増えていくと思います。自分が受けた10年前くらいのセンターは「対比」が大好きだった気がするのですが、共通テストになってからは「類比」へ焦点を充てさせる設問が増えていますね。問3は(A)と同じく、 after submitting your camp application なので本文の最後の部分を読みましょう。

第2問
(A) 靴の商品説明。問2はリード文もヒントになってましたね。主人公の悩みが sore feet ですからね。この問題に限らずリード文に目を通すのも大事です。問3~問5までは、複数コメントの照らし合わせ。こうした情報処理は、学術的な情報処理よりも難しいかと思います。難解な単語の定義を理解した上での短い言葉の言い換えではなく、少し長めなコメント文全体の内容を把握して言い換えに気づく必要がありました。
(B) こちらも問1はリード文にヒントがあります。問2の算数はそれほど難しくないかな。昨年度の家電の算数に比べれば単純です。問3~問5はこちらも複数コメントの照らし合わせ。誰のどこを読むかを判断するのに時間がかかりますね。しかも絶妙な言い換えにきちんと気づく必要がありました。徒歩通学の友達が参加できなくて悲しんでいた、を徒歩通学の生徒も参加させられたかも、という表現に変えられていたりとか。

第3問
(A) ここは単純だったかな。照らし合わせ箇所も順番どおりですね。top を一番上だと思わないようにしてください。
(B) 問2の advice が少し探しづらいかな。 opinion などもそうですが、助動詞(should, must, need to など )を参考に探すのがいいかと思います。この大問はさほど難しくない印象です。

第4問
テスト本番に勉強法のアドバイスをくれるという何とも粋な計らいを感じる文章でしたね。短期間に集中的に覚えるのではなく、体験の中で覚えたり、期間を開けて反復したりしましょうというアドバイス。受験生からしたら、今更言われてもといった感じでしょうが…。高2生以下の人たちは参考にしてください。
問1~問3は、答えが書いてありそうな場所を探すのは簡単かと思います。言い換えに注意が必要ですね。問1は repetitive learing と continuous drilling、問2は dull と boreing、 28 days と four weeks 、問3は longer と extended などなど。問4は少し難しいかと思います。Leeさんが、Oxfordさんのcontextual learning に関して insightful で can be beneficil と言っているところから同意見だと読み取れ必要がありました。その仕掛けに気づけないと、Leeさんの文章のもっと下の見当違いの部分を無駄に探す羽目になると思います(自分もそうしてしまいましたので…)。問5は推測問題ですね。直接は書いていないと思いますが、 interval について論じているという論旨を把握した上での推測が必要でしたね。

第5問
昨年度までの伝記と比べると内容は読みやすかったかなと思います。高校生が想像しやすい場面設定でした。解く手順として、まずは notes の方から目を通しましょう。そのうえで、メリハリをつけて本文を読むのがいいです。きちんと読む箇所と、サラッと読む箇所を分けて読みましょう。リード文を読むと、イギリス出身の生徒の文章だとわざわざ書いてあるので、イギリス英語に関わる知識が問われるのかと思いきや、おそらく何の知識も必要なかったですね。 football がアメリカンフットボールではなくサッカーのことを表している、というくらいですかね。自分が気づけていないだけかもですが…。イギリス英語を出すという方針は言われているので、次年度以降も注意が必要かと思います。
まず問1は、文を挿入するべき箇所の前の because に注目。理由を答えていそうな箇所を探しましょう。ここで、 because と as が同じ意味であるという認識が重要ですね。それがわかれば探せたと思います。問2は、問1から結構読み進めないといけないことに惑わされたかもしれないですね。notes を読めば、brother の話を探すことはわかるのですが、その該当箇所が遠いので、焦れずに読み進めることが大事です。そして、具体的な会話から抽象的な教訓を導くという思考が必要でした。これがまさに推測させる系の問題です。問3は時系列並び替え。ダミーの選択肢もきちんと注意しないと選んでしまいそうですね。 champion ではなく silver medal でした。あとは、問2を解く際には読み飛ばさせた箇所を読む必要がありました。本文で書いてあることを一旦覚えておきながら、選択肢と照らし合わせるという技術も要求されていますね。英語の字面を追うのではなく、ストーリーとして理解できていれば、選びやすいかなと思います。問4は仮定法の文章の言い換えですかね。本文の attempting to grasp someone’s intention が tried to understand his friend’s point of view に言い換えられていることに気づければ答えられたかな。問5は主旨を推測させる問題。センター試験時代の大6問の論旨を問う問題のような、本文全体の結論なんて最終段落に書いてあっしょ、といった類の易しい問題ではありません。最終段落だけから判断した人はダミーの選択肢に引っかかったかもしれません。ストーリー全体から、抽象度の高い教訓を推測させる問題でした。消去法に頼らざる負えないかなという印象。きちんと本文の英語を理解し、内容を噛み砕いたうえで、それを記憶にとどめながら、主旨に反していない選択肢を選べばよいのかな。情報を照らし合わせるわけではないです。

大6問
やっと最後です。
最後に鬼門が待っていましたが…。
(A) collecting に関する文章。文章が3ページ目まであることに戸惑った人もいるかもしれません。長いですね…。これも notes を参考に解きましょう。問1。 yard sale の箇所は探しやすいかなと思います。言い換えられている箇所もそれほど難しくはないかな。問2は分数表現が肝ですね。 one third は3分の1なので、約30%。これくらいの算数は大丈夫だと思います。ただ、 Facts のもう一つがギネス記録の話だったので、2ページ目を探してしまった人も多いかもしれないですね。ここは冷静に先に選択肢をサラッと見て、なんか数字の話をしてることに気づき、1ページ目の話だと軌道修正できればと思います。 Facts にギネス記録の話を書いておくことは、問3にも効いてきます。問3の根拠をギネス記録より後から探した人は、永遠に答えに出会えなかったかもしれません。ここでも冷静に軌道修正が必要。一度抱いた先入観を捨て、広い視野をもって1ページ目に戻れるかが鍵でしたね。⑥を選べて④を選べなかった人も多かったのではないでしょうか。この問題に限らずですが、完答形式の問題が多いのも受験生にとっては苦しいでしょう。片方だけの正解では得点をもらえません。今年はそれが5問もありました。2022年も5問、2021年は4問でした。センター時代は、文法の整序問題を除けば、完答形式は通常1問程度だったことを思うと、この形式によって失点している人は多いのではないでしょうか。問4も推測問題です。最終段落の1文目と最終文の疑問文を組み合わせて推測する必要がありました。途中の文にある、remain the same に引っ張られると正答の change を選びづらかった思うし、 technology というワードに引っ張られて④にした人もいるだろうし、中々難しかったですね。
そして問題の(B)です 。うーん、、、この問題は飛ばす勇気を持ちましょう。それが1番の教訓です。難しい問題に時間を溶かされないようにしましょう。来年度以降も、どこかの大問が他と比べて難しいという作り方をしてくると思います。なので、問題の難易度を見極めてあまり時間を取られすぎないという選択も大事です。ここで時間を取られるくらいなら、大1問をもう一度見直してください。
気を取り直して問1。いやー、解答の該当箇所が遠すぎる…。読んでも読んでも、答えが見当たらないですよね。大6問Bのこの問1、問2の構造は、大1問と同じ構造の100倍意地悪バージョンです。間違いを探すという設問、かつ5択、そして間違いの根拠も claw と feet という細かい部分でした。ここは正解できなくても仕方ないかなと思います。問2の方が文章的には先に解答の根拠があります。ちょっと意地悪ですね。ダミーの選択肢に、 shark-like mouths という他の選択肢より後ろの箇所の話を混ぜているのも動揺を誘います。間違いの選択肢の作り方としては、重要な形だったと思います。原因と結果の関係を正確に捉えないと騙されてしまいます。問3は固有名詞の内容を正確に捉える問題。バンド名や山の名前、化学物質の名前など、今までも固有名詞で惑わせてくるものはありましたが、今後もこれが続くと思います。ここは発音などわからなくても、冷静に説明を読解できるかが大事ですね。問5。選択肢の英文が長い。3行もあります。そしてこれも推測系の問題。 final statement という曖昧なタイトルのスライドに入れる文章なので、本文の主旨を問うているのでしょう。これも、センター時代の最終段落頼みという戦略を拒む難問です。消去法しかないかな。最初のスライドのタイトルが少しヒントかとも思いますが、それだけだと判断しきれません。細かい事実確認が必要。複数の段落の情報と照らし、間違っていない選択肢を選ぶという感じですね。問5も推測問題。宇宙の話をしてる段落を見るのですが、、、これも難問。ネット等を見る限り、②と迷った人が多いようです。 along with other creatures は違う気はするのですが、④を選ぶのも気は引けますね。本文の which が示す内容の解釈が問題なのだとは思います。

お疲れ様でしたm(__)M

問われている能力

大学入試共通テストで問われている能力はなんなのでしょうか?
まずは、大学入試センターが公表している資料から抜粋します。
 ●全科目共通の事項
①知識の理解の質を問う問題や,思考力,判断力,表現力等を発揮して解くことが求められる問題を重視する
 ●英語リーディング特有の事項
②外国語の音声や語彙,表現,文法,言語の働きなどの知識を,実際のコミュニケーションにおいて,目的や場面,状況などに応じて適切に活用できる技能を身に付けるようにすることを目標としている
③様々なテクストから概要や要点を把握する力必要とする情報を読み取る力

英文の中身に関しては、具体的な場面を想像させるような文章が多かった印象です。
上記の②に関して言うと、抽象的な論文の理解も大事ですが、それ以上に具体的な場面への想像力も重視しているのかなと思います。
大1問~第5問までは比較的具体的な内容でしたね。
第6問は少し難解で抽象的な部分を含む文章でした。

③の関連だと、「複数コメントの共通点を問う問題」、「論旨を推測させる問題」が増加したことが特筆すべき点です。
現代文だと、書いてあることを超えていると正解にはならないという方針があると思いますが、英語リーディングに関しては書いてあることからの推測を求めている印象です。
情報の照らし合わせの射程が非常に広い問題も散見されますが、この傾向はわかっていたことかなと思います。

問われている能力を私なりにまとめると、
・共通点や言い換えを把握する能力
・具体を抽象化する能力
・本文の論旨を把握して内容を記憶しながら、選択肢と情報を照らし合わせる能力

正直これらは、英語に限らず、国語や地歴、数学でも必要になる能力かと思います。
実際今年も問われていたと思います。
上記の力を英語において発揮できるようにしておく必要がありますね。
英語の単語力や文法力、速読力はもちろん、+αとして上記のような一般的な能力が試されています。

今後の対策

では、上記のような問題にどのように対処すればよいのか?
解決案をいくつか提案いたします。

①言い換え表現に敏感になる

まずはここからかと思います。
単語帳の英単語もただ覚えるのではなく、似たような意味のセットで覚えるのが大事ですね。
昔のセンター時代だと、show, represent, mean, describe, refer to などが言い換えられることがよくありました。
今回だと、
repetitive と continuous
dull と boring
attempt と try
stop と avoid
grasp と understand
などなど。(設問別の所感でも書いたペアたちです)

同じ意味合いの単語をセットで覚えることが大事ですね。
これは現代文にも言えます。
さらに言えば、対義語もセットで覚えておくとなおよいですね。
今回の英語ではそこまで問われるものはなかったかと思いますが。

単語だけではなく、かたまりで言い換えられている部分なんかも大事ですね。
easy to use と user-friendly などです。

共通点に気づくためにも、まずは単語レベルでの同義語表現に気を付けましょう。

②タイトルを考えるクセをつける

何度も言うように、今回は具体を抽象化する能力が求められました。
これは英語に限らずだと思います。
例えばの対策法としては、当塾でも行っている、新聞学習の手法が参考になるかと思います。
信濃毎日新聞の「斜面」(朝日新聞で言う「天声人語」)の書き取りを中学生に課しているのですが、書き取った後にタイトルをつけてもらうようにしています。
もちろんもともとの斜面にはタイトルはありません。
斜面というのはエッセイのような文章なので、急なエピソードトークから始まったかと思ったら、最後は政治や経済の話に帰着する、みたいな構造をしています。
最初の具体的なエピソードはなんで挿入されたのか、どのような効果を狙ったのか、という視点が重要です。
具体的なエピソードから抽象的な結論にどう至ったかの論理の流れに敏感になる必要があります。
そうした読解を基にしないと、なかなかタイトルをつけるのは難しいです。

日頃から文章を読む際に上のような視点を持っていると、抽象化するヒントになるかもしれません。
その能力が英語読解にも通じると思います。

あとは、センター試験で言えば、第6問の問5あたりにあるタイトルをつけさせる問題なんかがいい練習になると思います。

③英文の内容を整理して記憶する練習

情報を照らし合わせるというは、同時に複数の作業を要求しています。
本文の内容を理解しながら、どの辺にどんなことが書いてあったか整理して読みながら、選択肢の英文を記憶しながら、該当箇所を探しながら、探し当てたら正誤を吟味する。
マルチタスクが凄まじいのです。
実際、各タスクを一つずつこなしていくほかないとは思います。

今回の問題で多かった論旨から推論させる問題は、英文の内容を整理して記憶するという作業が重要だと感じます。
英文1文1文の読解に気を取られすぎて、論理の流れがわからなくなる人が多いと思います。
とりあえず本文に目は通して英語を理解した気はしているんだけど、どこに何が書いてあったか整理できていないので、選択肢を吟味する際に、該当箇所を探す時間がかかってしまう。
それだと結局本文を何度も読んで時間がかかってしまいます。
これでは、該当箇所の探索と吟味に時間を取らせたいという共通テストの術中にはまってしまいます。
短めな情報処理、例えば第1問のちらしの情報処理などでは、こんな能力はいりません。
一方で、後半の論旨推測系の問題では、論理の流れを整理して記憶にとどめることで、論旨の抽象化が可能になると思います。
そんな問題と戦うためには、英文1文1文の読解をしたうえで、論理を整理し、内容を記憶するという作業が必要だと思います。
もちろん、段落ごとにメモを取っておいてもいいでしょう。

ここで重要なのは、英語というフィールドでの記憶力を鍛えるということです。

一口に記憶力と言っても多様な気がします。
世界史の用語を暗記する記憶力、一度行った友達の家までの道のりを覚える記憶力、文章内容を頭にとどめておく記憶力。
それぞれ分野が違うので、脳の使う部分が異なるのではないでしょうか。
ここでは、英文を読んで内容を記憶する練習が必要だと思います。

一つの訓練法は、
英文読解問題を一読だけして、本文に戻らずに内容一致設問を解くという練習です。
最初はなるべく短い本文のものが良いと思います。
できるようになったら、センター試験の第5問や第6問の設問でもやってみるといいでしょう。
論理展開がある文章の方がいいです。
論理展開さえ理解できていれば、細かい部分の正誤も判断しやすいと思います。

まとめ

以上が、問題の講評、問われていた能力の考察、対策案です。
ぜひ参考にしてください。

次回は英語リスニングを講評していきたいと思います。

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